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2023年5月中旬~8月上旬に行った対潜命中検証のまとめです。
調べるにあたって思考していたことを残しておくために記事を書きました。
【目次】
おことわり
背景
検証1 1-6-Eマス 対潜命中調査(電探なし)
検証1 ~内容~
検証1 ~結果~
検証1 ~考察~
発煙数と命中率の関係について
補正位置と補正量について
検証1における考察のまとめ
検証2 1-6-Eマス 対潜命中調査(電探あり)
検証2 ~内容~
検証2 ~結果~
検証2 ~比較と考察~
Fletcher改 mod.2 の比較
吹雪改二・綾波改二・敷波改二の比較
夕張改二特 の検討
検証2における比較検討のまとめ
検証3 1-6-Eマス 対潜命中調査(電探あり・追試)
検証3 ~内容~
検証3 ~結果~
検証3 ~比較と考察~
可能性1: 煙幕係数自体が変わっているパターン
可能性2: 電探係数によって命中率が変動するパターン
検証3における係数逆算と考察のまとめ
検証1~3の全データによる補正係数逆算
いかがでしたか?
おことわり
本検証は、一般的なブラウザを用いて目視で行いました。
そのため、ダメージ値を用いてクリティカルの判別を行うなどしています。
また、サンプルも各100出撃と確率検証にしては少なく、決して高精度とは言えませんが、自分の納得できるデータが取れれば満足というスタンスで調べていました(免罪符)ので、その点ご理解いただけると嬉しいです。
また、本記事の情報は2023/08/06までに行った検証に基づきます。
なお、煙幕の仕様の大事な部分は、既にぜかましねっとさんの記事が公開されているので、そちらを読んでいただくのが良いと思います。
本記事は、自身の行った検証を整理し、検証と考察の過程を読める形で残しておくために、検証中に考えていたこととその結果をまとめ直したものです。
以降だらだらと続きますが、お付き合いいただける方はどうぞよろしくお願いします。
背景
煙幕システムが実装されたのは2023春イベの最中でした。
同イベントでは、原子力潜水艦こと伊201&伊203にヤケクソのような特効が掛かっており、攻撃力はもちろん、命中面でも雷撃が必中になるほどの壊れっぷりでした。
当時は煙幕の仕様が謎に包まれており、「砲撃も雷撃もマジで当たらね~」というレベルの認識だったように思います。しかし特効潜水艦の雷撃に限ってはそれなりに煙幕を貫通して命中打が確認されており、まさしく違法雷撃といった様相でした。
イベントが終わったので、煙幕検証に手を付けることにしました。
電探が命中率に影響するだろう、ということは煙幕実装時の運営告知から読み取れたので、とりあえず電探なしで命中項を大きく変化させてみようと思いました。
電探を積まずに命中項を大きく変化させる方法には以下のようなものがあります。
- 装備命中や改修値の高い装備をたくさん積む
- 弾着補正・空母カットイン補正・徹甲弾補正を活かす
- キラ状態の艦娘を使う
- 雷撃戦において、雷撃攻撃力を上げる([0.2 * 雷撃攻撃力] だけ上昇)
- 対潜戦において、小型ソナーを搭載する(2 * 小型ソナー対潜値 だけ上昇)
当時は攻撃フェーズごとに補正が違うらしいということが明らかになっていなかったので、とりあえず一番安く調べられそうな対潜戦でデータを取ることにしました。
検証1 1-6-Eマス 対潜命中調査(電探なし)
まずは、煙幕による補正がどこにどれだけかかっていそうか調べました。
とりあえず、①命中項、②回避項、③命中率に対する加算や乗算、一定値への置換あたりを可能性として考え、得られた結果を尤もらしく説明できる補正の中で一番シンプルなものを採用しようという方針(この方針は今も変わっていません)でした。
検証1 ~内容~
下のような編成を用意して、海域1-6のEマスで100回戦闘を行いました。
戦闘データの採取は2023/05/13~2023/05/21にかけて行いました。
出撃先に海域1-6-Eマスを選定した理由は次の通りです。
- 敵艦が低回避の2種類(カ級・カ級elite)のみで、データ整理が楽
- 敵陣形パターンが1種類(梯形陣)のみで、データ整理が楽
- 敵艦が3~5隻なので、先制対潜をそれなりに耐えて砲撃戦のデータも取らせてくれる
- ルート固定が可能
こちらの艦娘の通常時の命中項(単横陣vs梯形陣)は、
- 昭南改: 109
- Fletcher改 mod.2: 110
- 吹雪改二: 137
- 綾波改二: 157
- 敷波改二: 177
- Ташкент改: 219
であり、
また、海域1-6-Eマスの回避項は、
- 潜水カ級: 3
- 潜水カ級elite: 13
なので、理論命中率は全ての敵艦に対して97%(命中率キャップ)となります。
検証1 ~結果~
検証結果は以下の通りとなりました。(報告ツイート / スプレッドシート)
- 戦闘回数: 100
- 累計攻撃回数: 981
- 累計命中回数: 346
- 艦娘命中項加重平均: 157.4057
- 敵艦回避項加重平均: 5.4261
艦別・発煙数別データは画像およびスプレッドシートをご覧ください。
検証1 ~考察~
この結果から、①発煙数と命中率の関係、②補正位置と補正量について考察しました。
発煙数と命中率の関係について
各項で十分なサンプル数を確保するため一旦攻撃艦の如何を無視し全てひとまとめにして、発煙数別の命中率をまとめると右のようになりました。
この表と散布図から、
- カ級とカ級eliteだとカ級に対しての方がよく当たっていそう
- 発煙数によって命中率はそこまで変わらなそう(95%CIが被っている)
ということがいえそうです。
サンプル数が少ないため誤差範囲が広く、発煙数によって命中率に全く差が生じていないと断言するには不十分ではあります。
ただ、差はそこまで大きくなさそうだぞ、ということで、以後の考察は「発煙数が命中率に与える影響はない」と仮定して続けることにします。
補正位置と補正量について
次に、補正位置と補正量について考えました。
各艦娘ごとのサンプル数のばらつきを無視して、命中項をx軸に、実測命中率をy軸にとり、敵艦ごとにグラフを作成すると、以下のようになりました。
また、各敵艦と全体とで回帰直線の式はそれぞれ以下の通りとなりました。
- 潜水カ級: y=0.002291x+0.004382 (相関係数 0.929)
- 潜水カ級elite: y=0.003010x-0.174119 (相関係数 0.963)
- 全体: y=0.002481x-0.041962 (相関係数 0.953)
命中項と実測命中率の間にはきわめて高い相関関係があることがわかります。
ここで、煙幕補正の位置を命中項への乗算及び加算のみであるとすると、
全体での回帰直線の傾きが0.002481なので、乗算部分は約0.25であると考えられます。
※ x軸の単位は整数、y軸の単位は%なので、補正値は傾きの100倍になります。
ところで、敵艦回避項加重平均は5.4261でしたが、切り捨てとキャップ処理を考えないとき、命中項0における仮想命中率は、
0 - 5.4261 + 1 = -4.4261%
となりますが、これは全体の回帰直線のy切片 -0.041962 に対応づけられます。
以上より、煙幕補正を 命中項 * 0.25 程度と仮定することによって、命中項への加算補正や回避項・命中項への乗算・加算・置換処理がないと考えても実測値を説明できます。
検証1における考察のまとめ
検証1での考察をまとめると、以下のようになります。
- 発煙数が命中率に与える影響は小さい。
- 煙幕による補正は命中項への約0.25倍の乗算によって説明できる。
ちょうどこの検証のデータの採取をしていたころに、tataさんとThealliaさんの検証により、砲撃戦における煙幕補正は命中項への乗算で概ね説明できる(係数は電探ありで0.35程度、電探なしは命中下限で逆算値0.12以下)ことがわかってきていました。
砲撃と対潜で補正が違うなんて思わなかったので仕様の複雑さに困惑した記憶があります。現実における煙幕というものを考えれば、確かに水上と水面下とでは性質が異なっていても何ら不自然ではないのですが。
…ということもあり、以降の検証では、命中項への乗算をベースに考えています。
検証2 1-6-Eマス 対潜命中調査(電探あり)
次に、電探を積んでどれだけ命中率が変わるのか調べることにしました。
検証2 ~内容~
下のような編成を用意して、海域1-6のEマスで100回戦闘を行いました。
戦闘データの採取は2023/06/06~2023/06/16にかけて行いました。
こちらの艦娘の通常時の命中項(単横陣vs梯形陣)は、
- 昭南改: 109
- Fletcher改 mod.2: 110
- 吹雪改二: 143
- 綾波改二: 143
- 敷波改二: 143
- 夕張改二特: 215
であり、それぞれ電探を0~2個積んで命中率の差を見ようとしました。
特に、吹雪・綾波・敷波については、命中項を揃え、電探なしとありの差(吹雪と綾波)、電探の個数が及ぼす影響(綾波と敷波)の両方を考察できるようにしました。
これは余談なのですが、練度と運をほぼ同じくらいに揃えて育成した嫁を用意することで、命中項を揃えた検証が容易になるというライフハックがあります。かわいいですね。
検証2 ~結果~
検証結果は以下の通りとなりました。(報告ツイート / スプレッドシート)
- 戦闘回数: 100
- 累計攻撃回数: 1021
- 累計命中回数: 331
- 艦娘命中項加重平均: 147.2184
- 敵艦回避項加重平均: 5.0176
艦別・発煙数別データは画像およびスプレッドシートをご覧ください。
検証2 ~比較と考察~
命中項を揃えた各艦および夕張改二特について、結果を比較してみました。
Fletcher改 mod.2 の比較
Fletcherは検証1と検証2の両方で使っており、それぞれの装備は画像の通りです。
命中項はどちらも110で、実測命中率はそれぞれ以下の通りとなりました。
- 電探なし: 22.67%(95%CI: 16.42% ~ 28.93%) 敵回避項 5.09
- 電探あり: 26.40%(95%CI: 20.24% ~ 32.55%) 敵回避項 4.32
電探ありの方が3.73%高い命中率を記録しました。
しかし、統計的に有意な差があるとまでは言えませんでした。
吹雪改二・綾波改二・敷波改二 の比較
次に、吹雪・綾波・敷波の実測命中率はそれぞれ以下の通りとなりました。
- 吹雪改二 / 電探0: 27.59%(95%CI: 20.95% ~ 34.23%) 敵回避項 5.30
- 綾波改二 / 電探1: 32.47%(95%CI: 25.88% ~ 39.06%) 敵回避項 5.47
- 敷波改二 / 電探2: 34.54%(95%CI: 27.85% ~ 41.23%) 敵回避項 4.86
電探を増やせば増やすほど命中率は少しずつ高くなりました。
とはいえ、95%CIは被っており、検証1の考察に基づく理論命中率も31~32%となるため、これも統計的に有意であるとはいえない差になってしまいました。
夕張改二特 の検討
夕張は高命中項領域における電探要員として入れたので、他艦との比較はできません。
命中率は以下の通りとなりました。
- 夕張改二特 / 電探1: 47.31%(95%CI: 40.14% ~ 54.49%) 敵回避項 4.72
検証1の考察に基づく理論命中率は50.03%です。
これも有意な命中率変化とはいえず、なんなら理論命中率より実測値が低く出ました。
検証2における比較検討のまとめ
以上、3グループに分けて比較検討をしてきましたが、「電探の搭載による命中率の上昇は統計的に有意な差があるとはいえないほどで、具体的な補正量を論じることはできないが、補正量はあまり大きくないのではないか」というのが検証2での考察になります。
もし電探による影響があったとしても、この程度ならば電探以外にスロットを割くべきで、実運用上はこれでも困らないレベルであるとは考えていました。
とはいえこれで終わるのはなんかもやっとするので、追検証を行うことにしました。
検証3 1-6-Eマス 対潜命中調査(電探あり・追試)
ということで追試です。
こうなったらめいっぱい電探を積んでやることにしました。
検証3 ~内容~
下のような2編成を用意して、海域1-6のEマスで100回ずつ戦闘を行いました。
戦闘データの採取は2023/07/17~2023/08/06にかけて行いました。
今回は、夕張改二特のみ装備を変え、同艦のデータのみ採取しました。
他の艦娘は煙幕展開と敗北回避のために入れていました。たまに全ミスして負けましたが。
本記事の最初でも述べた通り、手作業のぬくもりに満ちた方法でデータを取っていたので、できるだけ出撃あたりのデータ入力作業の手間を減らしたかった… というのが本音ですが、どうせ全データ統合の係数逆算をするなら他の艦についての記録も取っておけばよかったと今になって思ったり思わなかったりしています。
検証3 ~結果~
検証結果は以下の通りとなりました。(報告ツイート / スプレッドシート)
- 戦闘回数: 200
- 累計攻撃回数: 388
- 累計命中回数: 114
- 艦娘命中項: 145
- 敵艦回避項加重平均: 5.1134
電探なしと電探ありとで、それぞれ以下の命中率となりました。
検証3 ~比較と考察~
実測命中率は以下の通りとなりました。
- 電探なし: 29.47%(95%CI: 22.99% ~ 35.96%) 敵回避項 5.32
- 電探あり: 29.29%(95%CI: 22.95% ~ 35.63%) 敵回避項 4.92
パッと見ほぼ同じですが、それを計算によって示していきます。
電探込みでの煙幕下命中項を、未知の係数を用いた以下のような仮定式で表しました。
煙幕下命中項 = 煙幕係数 * 通常命中項 + 電探係数 * 電探命中
煙幕下命中率 = 煙幕下命中項 - 敵艦回避項 + 1
この式は今までの仮定式をもとにしています。
煙幕係数は命中項に直接乗算される係数で、電探なしで約0.25になるアレです。
電探係数は新たに設定した係数で、電探命中との積を命中項に加算します。
命中率の式については、逆算しやすくするために切り捨てとキャップ処理を省きました。
方針として、
①電探を積むと煙幕係数自体が変わる(煙幕係数>0.25、電探係数=0)
②電探係数があるため命中率が変わる(煙幕係数=0.25、電探係数>0)
の2パターンを考え、よりシンプルに説明できる方を採用する方向性で考えました。
可能性1: 煙幕係数自体が変わっているパターン
まずは、煙幕係数が0.25でなくなっている可能性について検討します。
先ほどの仮定式において、電探係数を0とし、命中項を代入すると、
煙幕下命中項 = 煙幕係数 * 145
煙幕下命中率 = 煙幕係数 * 145 - 敵艦回避項 + 1
となります。
実測命中率とその95%CIを代入して煙幕係数を逆算すると、
- 電探なし: 0.233(95%CI: 0.188 ~ 0.278)
- 電探あり: 0.229(95%CI: 0.185 ~ 0.273)
となり、どちらも0.25に近い値になります。また0.25はどちらの95%CIにも収まります。
また、電探ありで煙幕係数を0.30などと仮定すると95%CIを逸脱することがわかります。
よって、電探の搭載によって煙幕係数が変化している可能性は低いと考えます。
可能性2: 電探係数によって命中率が変動するパターン
次に、煙幕係数は0.25とし、電探係数を逆算してみます。
このとき、仮定式は次のように表せます。
煙幕下命中項 = 0.25 * 145 + 電探係数 * 36
煙幕下命中率 = 0.25 * 145 + 電探係数 * 36 - 敵艦回避項 + 1
したがって、電探の有無により生じる命中率差分(電探あり命中率-電探なし命中率)は、それぞれのデータを採取したときの敵艦回避項加重平均を同じとみなすと、
命中率差分 = 電探係数 * 36
と表せます。
実際の命中率差分を代入して電探係数を逆算すると、
- 電探あり95%CI下限-電探なし実測命中率: -6.52% よって、電探係数=-0.181
- 電探あり実測命中率-電探なし実測命中率: -0.18% よって、電探係数=-0.005
- 電探あり95%CI上限-電探なし実測命中率: 6.16% よって、電探係数=0.171
となり、逆算された電探係数はほとんど0になります。
したがって、煙幕係数が変わらないとき、電探係数は0であると考えます。
検証3における係数逆算と考察のまとめ
以上の係数逆算と考察をまとめると、以下のようになります。
電探装備時の対潜攻撃命中項は 命中項 * 0.25 + 0 で説明できる。
すなわち、電探の搭載による命中率の上昇は、無いかきわめて小さい。
煙幕展開下においても、敵水上艦を捕捉するための装備である電探では対潜攻撃の命中率に寄与できないということですね。こう書くと至極当たり前のことのように感じられる
検証1~3の全データによる補正係数逆算
ここまでの検証で、発煙数と電探の有無が命中率に与える影響はどちらも無いか、あるいは非常に小さいことがわかってきました。
ということは、全データをひっくるめて補正係数を逆算しても問題ないということです。
乗算補正のみで説明できそうだとわかっているので、仮定式は
煙幕下命中項 = 煙幕係数 * 艦娘命中項加重平均
煙幕下命中率 = 煙幕下命中項 - 敵艦回避項加重平均 + 1
とします。
全データを統合すると以下の通りとなりました。(報告ツイート / スプレッドシート)
- 戦闘回数: 400
- 累計攻撃回数: 2390
- 累計命中回数: 791
- 艦娘命中項加重平均: 151.0397
- 敵艦回避項加重平均: 5.2008
となり、実測命中率は 33.10%(95%CI: 31.21% ~ 34.98%)です。
よって、煙幕係数は、0.247(95%CI: 0.234 ~ 0.259)と逆算されます。
勘に従い0.05刻みで設定されているとすると、0.25が最も近くなります。
いかがでしたか?
本記事では、煙幕展開下における味方側対潜攻撃の命中率について考察しました。
要点は次のようにまとめられます。
- 煙幕下の味方側対潜攻撃命中項は、0.25 * 通常命中項 と表せる。
- 発煙数が命中率に与える影響は、無いか小さい。
- 電探の有無が命中率に与える影響は、無いか小さい。
この結論から考えると、煙幕を展開して道中の対潜戦闘を切り抜けようとするのであれば、ソナーも電探も捨てて回避をお祈りするのが基本戦術になりそうですね。
仮に煙幕によって敵の攻撃命中率を下限キャップ付近まで落とせたとしても、的を減らせず敵の攻撃がいっぱい飛んで来てしまったら避けきれないかもしれません。対潜装備を積んで敵の攻撃本数自体を減らすのか、煙幕でスロットを圧縮するのか、どちらが良いか見極める意識を持っておきたいところです。
何かお気づきの点などありましたら、Twitterまでご連絡ください。
煙幕含め環境ががらりと変わった夏のイベントも頑張っていきましょう。
ここまで読んでくださり、ありがとうございました。