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2023年5月上旬に行った命中検証のまとめです。
普段あまり意識しないような状況を想定した検証で内容がややわかりにくいと思ったので、自分用の整理も兼ねて記事にしました。



【目次】
おことわり
検証に用いたデータ
クリティカル率逆転現象とは何か
 命中率とクリティカル率の関係
 命中率が十分に高いときの攻撃判定分布
 命中率が極めて低いときの攻撃判定分布
検証1 6-5-Aマス 赤疲労加賀 砲撃命中調査
 検証1 ~内容~
 検証1 ~結果~
 検証1 ~考察~
艦載機熟練度は煙幕を貫通するのか
検証2 6-5-Aマス 赤疲労加賀 砲撃命中調査(煙幕あり)
 検証2 ~内容~
 検証2 ~結果~
 検証2 ~考察~
いかがでしたか?





おことわり

本検証は、一般的なブラウザを用いて目視で行いました。
そのため、ダメージ値を用いてクリティカルの判別を行うなどしています。
また、サンプル数もそれぞれ100程度で、検証の精度はお世辞にも高いとは言えません。
自分が納得できるデータを取れれば満足というスタンスで調べていました(免罪符)ので、厳密性については保証できない部分があると思われます。
以上のことをご理解いただいたうえでお読みください。



検証に用いたデータ

検証に用いたデータと統計はこちらの スプレッドシート にまとめてあります。

本稿はこれについてだらだらと解説していく感じの記事になります。
なので、お急ぎの方はこのスプレッドシートを見て回れ右で全然オッケーです。
お付き合いいただける方はどうぞよろしくお願いします。



クリティカル率逆転現象とは何か

まずは、本稿タイトルの一部でもある「クリティカル率逆転現象」について説明します。


命中率とクリティカル率の関係

関数を次のように定めます。

  • int(x): xを最も近い整数に切り捨てる関数
  • sqrt(x): xの正の平方根を返す関数
  • MaxCap96(x): 命中率の上限キャップ関数(96より大きい場合96に置換する)
  • MinCap10(x): 命中率の下限キャップ関数(10より小さい場合10に置換する)
このとき、命中率とクリティカル率(クリ率)は以下の式に従うことがわかっています。
なお、詳細な式は 攻略Wiki - 命中と回避について を参照してください。
  • 命中率(熟練補正無) = MaxCap96(MinCap10(命中項 - 回避項) * 回避側疲労補正)
  • 命中率(熟練補正有) = 命中率(熟練補正無) + 熟練度命中補正
  • 最終命中率 = int(命中率(熟練補正有)) + 1
  • クリ率 = int(クリティカル定数 * sqrt(命中率(熟練補正有)) + 熟練度クリ率補正) + 1

命中率が十分に高いときの攻撃判定分布

命中率が十分に高いときの攻撃判定分布は以下のようになります。

命中分布模式図(高命中率)

空母の砲撃戦以外では熟練度補正を考えないため、上側のようになります。
すなわち、通常判定の発生率は命中項と回避項によって決まり、その平方根にほぼ比例する確率でクリティカルが発生します。

空母の砲撃戦では、熟練度補正を考慮する必要が出てきます。
熟練度によって命中率とクリ率の両方が上昇し、命中率は全スロット熟練度 >> なら+12%、クリ率は熟練スロ数に応じて(現環境では最大で+32%まで)上昇します。
命中判定のうち一部がクリ判定に置き換わるようにして確率が決まります。

なお十分に高いと書きましたが、普通に出撃している限りは大体このようになります。
昼砲撃戦の命中定数は一般に90でそれにレベルや運や装備の補正などが加わるのに対して、深海棲艦の回避項はナ級IIですらせいぜい70程度であるためです。


命中率が極めて低いときの攻撃判定分布

一方、命中率が極めて低いと、攻撃判定分布は以下のようになると考えられるはずです。
なお、今回の検証でこの図が間違っていることがわかりました。
後ほど正しい図を掲載しますので、どうか最後までお付き合いください。

命中分布模式図(低命中率 - 予想)

ここで「極めて低い命中率」というのは下限キャップ(命中率11%)付近を指します。
昼砲撃戦の場合、命中下限キャップのときクリティカル率は5%になります。
これを表したのが上の分布になります。空母の砲撃戦以外では命中率の平方根によってのみクリ率が決まるため、計算上特に問題は起きません。

しかし、空母の砲撃戦になると話が変わってきます。
熟練度補正は、命中率・クリ率ともに加算です。そして前項で述べたように、命中率補正はたかだか+12%にしかなりませんが、クリ率は最大+32%もの補正を受け得るため、「攻撃100回のうち命中するのはたった23回だが、クリティカルは39回も発生し得る」という訳の分からない計算結果が出てしまうのです。
攻撃を命中させないと発生し得ないクリティカルの確率が命中率を上回る、ということで、これを「クリティカル率逆転現象」と呼ぶことにしました。



検証1 6-5-Aマス 赤疲労加賀 砲撃命中調査

クリティカル率逆転現象が起き得る状況を設定して検証を行いました。


検証1 ~内容~

下のような編成を用意して、海域6-5のAマスで60回戦闘を行いました。
戦闘データの採取は2023/05/03~2023/05/04にかけて行いました。

攻略編成_20230503-232258343

この装備構成の加賀改二護は、単縦・赤疲労時の砲撃命中項が60です。

海域6-5-Aマスの敵艦隊の単縦回避項は

  • 駆逐イ級後期型: 51
  • 駆逐ロ級後期型: 53
  • 駆逐ハ級後期型: 55(海域ゲージがフルで残ってたので出現しませんでした)
  • 軽巡ホ級flagship: 49
  • 軽巡ヘ級flagship: 50
となっていて、
理論命中率は、軽巡ホ級flagshipのみ24%、それ以外が23%(熟練込下限)となります。
理論クリティカル率は、すべての敵艦に対して39%となります。

なお、龍鳳改二戊は敗北回避が目的だったので、特にデータは採取していません。
戦艦はLv.1~3のいわゆるバイト艦で、二巡化(データ採取効率の倍化)で入れていました。


検証1 ~結果~

検証結果は以下の通りとなりました。報告ツイート

検証1 結果
  • 戦闘回数: 60
  • 攻撃回数: 103
  • 命中回数: 44
  • 命中率: 42.72%(95%信頼区間: 33.17% ~ 52.27%)
  • クリ回数: 44
  • クリ率: 42.72%(95%信頼区間: 33.17% ~ 52.27%)

命中した攻撃のすべてがクリティカル判定でした。
また実測命中率はかなり高く、42.72%でした。
各敵艦への攻撃回数から求めた理論命中率は23.05%でしたが、実測命中率の95%信頼区間にこの値は含まれず、理論クリティカル率39.00%は含まれるという結果になりました。


検証1 ~考察~

検証1の結果から、以下のように考察しました。

クリティカル率逆転現象下では、クリティカル率が命中率を上書きして、最終命中率は理論クリティカル率に等しくなる。

このとき、先ほどお見せした攻撃判定分布は次のように修正できます。

命中分布模式図(低命中率 - 結果)

熟練度クリ率補正がクリティカル率を大きく引き上げたことで命中率より大きい値になり、結果的に通常判定が一切発生しない、全弾クリティカルの状況が発生するわけです。

なお、艦これ改式では、砲撃命中判定は以下のようになされるとされています。

  1. 0以上99以下の一様な整数乱数を生成する。
  2. 乱数が int(クリティカル定数 * sqrt(命中率)) 以下ならクリティカル判定とする。
  3. 上記以外で、乱数が 命中値 以下なら命中判定とする。
  4. 上記のすべてに当てはまらなければミス判定とする。

ただし、艦これ改の仕様は本家と必ずしも同じではない点には注意です。
しかし、もし同様の判定方法であると仮定するのであれば、2. のクリティカル判定の際に、乱数と int(クリティカル定数 * sqrt(命中率(熟練補正有)) + 熟練度クリ率補正) を比べている可能性が高いのかもしれないですね。
便宜上、「命中率を上書きする」という書き方をしましたが、実際にはクリティカル判定が先に行われているだけではないかということです。まぁこれはあくまで予想ですが。



艦載機熟練度は煙幕を貫通するのか

発煙装置(煙幕)

2023/04/23アップデートにて、深雪改二とともに煙幕システムが実装されました。
本稿を執筆している時点ではまだ実装からわずか2週間しか経っておらず、仕様についてはまだ煙幕に隠されている分からないことだらけというのが現状です。
本記事では煙幕のアレコレは説明しませんが、何がわかっていて何がわかっていないのかをわかりやすくまとめた記事を引用しておきます。

今回は、そんな謎多き煙幕システムのうち、艦載機熟練度は煙幕を貫通するのか、すなわち煙幕展開中の砲撃戦でも熟練度クリ率補正分だけ命中弾を得られるのか調べてみました。



検証2 6-5-Aマス 赤疲労加賀 砲撃命中調査(煙幕あり)

検証1と同じ状況を設定した上で、発煙装置(煙幕) を取り入れて検証を行いました。


検証2 ~内容~

下のような編成を用意して、海域6-5のAマスで60回戦闘を行いました。
戦闘データの採取は2023/05/05~2023/05/06にかけて行いました。

攻略編成_20230505-030037494

検証1との相違点は矢矧改二乙の有無のみです。
矢矧改二乙に「発煙装置(煙幕)」を3個持たせて煙幕が展開されるようにしました。

戦艦は3スロの艦と4スロの艦を採用していましたが、装備構成は 主砲/主砲/偵察機 または 主砲/主砲/徹甲弾/偵察機 とし、煙幕に関与すると考えられる電探は装備していません。
また、海域6-5-Aマスには電探持ちの敵艦が存在しないことも補足しておきます。


検証2 ~結果~

検証結果は以下の通りとなりました。報告ツイート

検証2 結果
  • 戦闘回数: 60
  • 煙幕展開回数: 60(発煙数1 : 発煙数2 : 発煙数3 = 35 : 15 : 10)
  • 攻撃回数: 111
  • 命中回数: 39
  • 命中率: 35.14%(95%信頼区間: 26.25% ~ 44.02%)
  • クリ回数: 39
  • クリ率: 35.14%(95%信頼区間: 26.25% ~ 44.02%)

命中した攻撃の全てがクリティカル判定でした。
実測命中率は検証1よりも約7.58%低く、35.14%となりました。

命中率まとめ

また、サンプル数100余りと確率検証にしては少なく95%信頼区間はまだまだ広いですが、検証1と検証2の信頼区間はそれなりに重複しています。


検証2 ~考察~

検証2の結果から、以下のように考察しました。

煙幕展開中の砲撃戦で、なおかつクリ率逆転現象が起きていた場合には、熟練度クリ率補正分だけ命中弾を得られる可能性が高い。
命中率またはクリ率へのデバフはあっても高々10%程度と考えられる。

ただし、何度も言ったようにサンプル数が少ないので断言はできません。
また、先の統計は発煙量(煙幕の濃さ)を考慮せず、煙幕が展開した出撃をごっちゃにして考えている点にも注意が必要です。サンプル数がまだ少ないので…。
ただ、信頼区間を2分の1に狭めるためにはおよそ4倍の試行回数が必要になってくるので、正直これ以上詰めないつもりでいます。ごめん。



いかがでしたか?

本記事では、クリ率逆転現象と煙幕展開下の空母砲撃命中率についてまとめました。
要点を再度おさらいすると、

  • クリ率逆転現象は、低命中率で熟練クリ率補正が大きいと起こる現象である。
  • クリ率逆転現象によってクリ率が命中率を上回ったとき、クリ率が理論命中率を上書きして最終命中率はクリ率に等しくなると考えられる。
  • 煙幕展開中も、熟練度クリ率補正分だけ命中弾を得られる可能性が高い。
    クリ率へのデバフはないか、あっても高々10%であると考えられる。
という感じです。

以上の結果から考えると、煙幕を使う編成で一方的に命中の理不尽を押し付けたいときには空母の開幕と砲撃が有効かもしれないということがいえそうですね。
ただし、この仕様はあくまでクリティカル率が底上げされたことによると考えられるので、空母全般が強いという勘違いには気をつけたいところではあります。あくまでも「熟練度のついた攻撃機をたくさん積んだ」から強いのです。真のMVPは艦載機熟練度でした。






何かお気づきの点などありましたら、Twitterまでご連絡ください。
皆さんのよき煙幕ライフをお祈りして結びといたします。
ここまで読んでくださり、ありがとうございました。